『私は存在が空気』中田永一:誰もが応援してしまうキャラ作りの妙

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今週の書評は昔から大好きな作家さんの最新作。

中田永一さんの『私は存在が空気』です。

中田さんといえば昨年、

『百瀬、こっちを向いて。』が元ももいろクローバーZの早見あかりさん主演で映画化されるなどメディア化された作品も多数ある人気作家。

よく知られたことですが

中田さんは元々乙一という名義でデビューしており、

『GOTH リストカット事件』や『ZOO』といった作品で人気作家の仲間入りを果たしているお方。

そんな乙一さんがなぜ中田永一名義で作品を発表し始めたのかは諸説あり

本当のところはわかりませんが

僕としては大好きな作家さんである乙一さん=中田永一さんの作品が読めるだけで満足なので

そこに深く突っ込むことはしなくて良いかなあと思っています。

さて肝心の内容ですが、

まさに中田永一ワールド全開の仕上がり。

六篇の短編で構成されているのですが

そのすべてのお話に超能力者×恋愛という要素が含まれているというコンセプト。

中田さんのつくるストーリーに共通する部分として、

主人公みんながどこか自分に自信がなく、

学校や職場や家族といったさまざまな人間関係を不得手としていることが挙げられます。

今作でもそれは同様で、

超能力を持っているのにそれを自分の利益のためには活用できない。

そんな不器用な存在としてキャラクターたちは描かれています。

そしてその不器用な彼らが

自分の恋した存在のために

悩みながらも一歩踏み出し、

成長していく姿に我々読者は共感してしまうんですよね。

今作の中で僕が最も面白いなあと思ったのは『少年ジャンパー』です。

主人公は瞬間移動という能力を持ちながら醜い外見のため学校に行くことができず軽度の引きこもりになってしまった少年。

この少年がひょんなことから自分の能力を知られてしまった学校の先輩に恋をし、

彼女のために自分の能力を使って奔走する姿を描いた物語です。

この話、とにかくキャラクターが魅力的。

特に主人公の恋の相手である瀬名先輩が主人公の醜い容姿も全く気にせず

彼と対等にコミュニケーションをとっていく姿や、

遠距離恋愛中の彼氏を真摯に想う姿(そのために瞬間移動の能力を使って福岡から東京まで監視に行くのですが)がいじらしくて本当にかわいいです。

そして先輩に思いを寄せながら

彼女のために浮気調査を一生懸命手伝う主人公もまた可愛らしい。

こうした自己犠牲の精神とか

それに伴って少しずつ変わっていく姿を描くのが中田さんは本当にお上手です。

実際にこんなにいい人たちが存在するかは分かりませんが、

思わず絶対に応援してしまうし、

その成長を自分のことのように喜ばしく思ってしまう。

そんなキャラの描写の巧さが中田永一の真骨頂だなと今作を読んで改めて思いました。

それ以外の作品も、

クスッと笑えて、

読み終わったあとになんだか自分も頑張ってみようかなあと思わせてくれるお話ばかりになっています。

あと余談ですがこの本の編集者が実は僕の友人だったりします。

一人の編集者としてこんな面白い本を作家さんとともに作り上げていることは素直に尊敬できるなと。

まあ本人には言いませんが。笑

表紙も漫画家の浅野いにおさんが素敵なイラストを描いています。

ぜひぜひ今作をきっかけに中田永一ワールドに触れてみてくださいね。

したっけ、またね!

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