『何者』朝井リョウ:凄い小説の構造

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本日はお休みを頂きまして、色々都内を散策。

21_21 DESIGN SIGHTの『動きのカガク展』にも行ってきましたのでその感想は後日ブログに書きますね。

さて今回は書評です。

映画化もされた『桐島、部活やめるってよ』等の作品で知られる朝井リョウさんの直木賞受賞作、

『何者』です。

朝井さんといえば早稲田大学在学中に『桐島、部活やめるってよ』を出版し、その後、映画会社の東宝に就職。

今作品は就職後、仕事の合間で書き上げた作品のようです。

仕事をしながら小説を書きあげるだけでもすごいのに、

その作品で直木賞まで獲ってしまうとは。

しかもまだ若干26歳。

才能って恐ろしいですねえ。

ちなみに僕も26歳。

同世代でもうこんなにも世間から評価されている人がいるっていうのは、単純にすごいなあという感情があるだけであまり嫉妬心とかはないもんですね。

畑が違うのもありますし、単純にステージが違いすぎてなにも感じないんでしょうかね?笑

むしろ、出来るなら一度お会いして話をしてみたいなあなんて思います。

さてそんなスーパーな朝井さんの直木賞受賞作、『何者』ですが就職活動を題材に5人の大学生に焦点を当てたストーリーとなっています。

この物語の面白さの要因として挙げられるのはその圧倒的なリアリティ。

就活頑張ってます!OBとの繋がり大切!名刺つくりました!というちょっと煙たがられるタイプの女子や、就活に興味は全然ないですというスタンスの意識高い系男子。おちゃらけキャラなのに就活がスムーズに進む男子などなど。

物語の各所に彼らのTwitterでのつぶやきが挿入されるのですが、

これ絶対モデルいるだろ!って思うほどのリアルさ。

さすが大学生活終了したばかりの朝井さんならではの部分だと思います。

ただ僕がこの本を読んでてすごく感じたことは、人が物語を面白く思うのは決してそこにリアリティがあるからではないんだろうなあということ。

人は(少なくとも僕は)共感したものに対して面白さを感じるという特徴を持っており、

リアリティがあるものの方がより共感しやすいというだけだっだりするんですよね、きっと。

またこの物語の語り手である主人公、拓人が「こういう奴っているよなあ、滑稽だなあ、面白いなあ」という視点で物語を語っており

そこにリアリティがあるからこそ僕たちは共感してしまうんだと思います。

人より観察力があって物事を分かっているという拓人の視点、つまり他者に対しての優位性をもった視点に共感しているんですよ。

つまりこの話を読んでいて面白い!リアリティがある!と感じた読者=拓人なんですよね。

で、この話が面白い小説にとどまらず、凄い小説だと僕が感じたのはこの読者=拓人を終盤で全否定してしまうところ。

これまで優越感に浸りながら常に客観性を持って物語を進めていた拓人=読者はこれでもかというくらいに自分の愚かな部分、格好悪い部分を曝け出されます。

物語終盤、煙たがられるタイプの女子、理香のこんなセリフがとても印象的です。

書籍からの引用で恐縮ですが記載させて頂きます。

“「いい加減気づこうよ。私たちは何物かになんてなれない」「痛くてカッコ悪い今の自分を、理想の自分に近づけることしかできない。みんなそれをわかってるから、痛くてカッコ悪くたってがんばるんだよ。カッコ悪い姿のままあがくんだよ」”

要は、拓人は恰好をつけて一歩高い目線から物事を見ることができているという自負心だけの人間でしかないんですよね。

だから就活も上手くいかない。彼だけ、大学5年生で就活2年目だという事実もここで明かされます。

この部分。

多かれ少なかれ、拓人に感情移入しながら読み進めていた読者にとっては結構衝撃的な場面だと思うんですよね。

そして同時に、やり方は様々ながら本当に頑張っている拓人以外の登場人物に対して、自分は優越感を持てるような人間なんだろうか?と考えさせられます。

主人公が優越感を持ちながら全体を進めることで読者の共感を醸成し、最後のひっくり返しで自らの姿勢を考えさせられる。

素晴らしい構成になっていると思います。さすが直木賞受賞作。

理香のセリフだけでも僕ら世代の若者は読む価値がある一冊だと思います。

痛くてカッコ悪くたってがんばるんだよ。カッコ悪い姿のままあがくんだよ

この言葉をときどき思い出しながら仕事を頑張っていきます。

したっけ、またね!

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