『蜜蜂と遠雷』恩田陸:王道を大長編で描ききった傑作

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

王道中の王道を

大長編で描ききった作品。

恩田陸さんの直木賞受賞作、『蜜蜂と遠雷』を読み終わったとき僕はそんな感想を持ちました。

舞台は日本の架空都市である芳ヶ江。

そこで3年に一度開催される国際ピアノコンクールの優勝を巡り

個性豊かな登場人物が

自分の才能と心情と未来を掛けてぶつかる様を描いています。

13歳のときに母を亡くし、そこからピアノが弾けなくなってしまったかつての天才少女、栄伝亜夜。

優勝候補筆頭と目される天才、マサル・C・レヴィ・アナトール。

そしてこの物語に波乱をもたらす少年、

今は亡き巨匠、ユウジ・フォン=ホフマンの弟子であり自宅にピアノを持たない養蜂家の息子、風間塵。

主にこの3人が中心となり物語は展開していきます。

まずこの作品、

恩田陸さんの過去の作品にも共通している点として

抜群にツボを付くキャラクター設定の妙があります。

主要登場人物の3人の設定は

ある意味少年漫画チックであり

僕の世代にはたまらないものがあります(経歴一切不明なのに世界的巨匠の最後の弟子とかね)。

また挫折を知る天才、

栄伝亜夜と他の二人とのつながりがまた良いです。

マサル・C・レヴィ・アナトールにとって栄伝亜夜はかつての幼馴染。

日本にいた僅かな時間ですが彼をピアノに向かわせた張本人でもあります。

コンクールでの偶然の再会後、

亜夜に恋心を抱くマサルですが

亜夜を再び音楽に導くのは風間塵のピアノでした。

彼のピアノは

観衆を絶賛と嫌悪の相反する感情に導くほど非常に扇情的な音です。

マサルの師匠で

このコンクールの審査員でもあるナサニエル・シルヴァーバーグは彼のピアノをこう評します。

審査員でも音楽家でもない、むき出しの自我をさらけ出される音楽だと。

彼のこのピアノによって

かつての天才少女はまた音楽の世界に戻ってきます。

この三人の距離感や

コンクールが進むに連れて変化していく心情の描写が素晴らしかったです。

上にも書きしたが

才能ある若者の成長を王道の要素でそれも507ページ2段組みという大長編で描いた傑作です。

恩田陸作品でよく言われている

ラストで投げっぱなしということもなく

きちんと作者なりの最後を描いたことも直木賞を取れた要因かなと思いました。

それにしても恩田さんの音楽への造詣がすごいなあと読んでいて度々感じます。

映画はよく見られてるんだなあと昔から思っていたのですが

音楽にも詳しく

この辺の知識とかそれに伴う取材に同行するのとか

編集の方はきっと大変でしょうね。

でもその取材及び知識があってこそ

この作品はこれだけ厚みのある物語になったんだと思います。

あ、上であえて触れなかったのですが(主要人物かと言われると?だったので)

28歳にしてコンクール最年長者の高島明石の描写も非常に良かったです。

才能はあるものの

決して天才ではない彼のキャラクターは

天才3人を引き立たせるとともに

読者の代替装置の役割をきちんと果たしていたと思います。

天才の気持ちに共感できないよ!って方でも

高島明石の素朴な悩みとか

天才を羨む気持ちとか

それでも前に進もうとする意志とか

色々合わさって

とてもいいキャラクターだなと思いました。

こういうキャラをさらっと出してバランスをうまい具合に取る所も恩田陸の素晴らしい感覚だなと思います。

あー、本当に良い物語を読んだなあって思えました。

確かに長いです。でも物語の濃厚さに引っ張られてすぐに読んでしまうと思います。

直木賞受賞作の名に恥じない傑作です。

是非一読してみてくださいね。

したっけ、またね!

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です