『無理』奥田英朗:地方都市のありのまま

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読んでいてページを捲る手が止まらない。

なのに気持ちはどんどん憂鬱に、憂鬱になっていく。

そんな珍しい小説に出会いました。

奥田英朗さん作の『無理』。

舞台となるのは架空の地方都市、ゆめみの市。

仕事がなく、名物もなく、金もない。

今の日本の一般的な地方都市の中で生きる

様々な背景を持つ5人を中心にまさに”無理”な現実を描いた作品です。

5人それぞれのエピソードが順番に描かれるので飽きがなく、

どんどん物語は進んでいくのですが、

このゆめみの市は地方都市を見事に再現しすぎていて

自分の生まれ育った街を思い出しました。

娯楽もなにもなく

ただただ閉塞感を感じるだけだったあの街。

正月にときどき帰ると

もちろん懐かしい気分になるけれど

だからといって戻りたいとは決して思わない。

そんな自分の、そしてみんな故郷を描いているのがこの小説なんだなあと思いました。

作中、

東京に進学することを目標にしている女子高生の史恵は街一番のカップルをみてこう思います。

“所詮、この街の一番でしかないのだ。原宿にいけば同じようなカップルははい捨てるほどいるのだ”

高校生の頃の自分もまさにそんなことを思っていました。

この街を早く出たい。

都会にいって生活したい。

あの田舎独特の周りの目を気にしすぎる感じや

出かけるところもみんな決まっている感じ。

ストーリー的にどう展開するか気になるのももちろんですが

それよりも5名の登場人物一人ひとりに

自分の街の人間を重ねることができたのが

この小説が僕に響いた要因だと思います。

奥田さんの作品は「空中ブランコ」のシリーズ以外読んだことがない気がしますが

さすが直木賞を受賞している作家だけあって

文章にも癖がなく

どんどん読ませる一流のエンタテイメント作家だなと思いました。

あとプロフィールを見たところ奥田さんは岐阜出身とのことなのですが

これ絶対自分の生まれ故郷をモデルにしてますよね。

それぞれの人物にモデルがいるんだろうなあと思いながら読んでいました。

あとは登場人物の幅が広いので

読者の誰もが一人は共感することができるキャラがいるんだろうなあとも。

その辺の書き分けの巧みさもまた素晴らしいと思います。

読後感が清々しいかと言われると決してそんなことはないですが

どこかしらに引っかかりを感じることのできる

良質なエンタメ作品だと思います。

特に僕みたいな地方の田舎出身の方は是非読んでみてほしいなあと思いました。

したっけ、またね!

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